井山 敬介

井山 敬介
【PROFILE】
Keisuke Iyama
1978年生まれ、北海道出身。
幼少の頃から地元・富良野の雪に戯れて育つ。アルペンレーサーとして実績を残し、高校時代にはナショナルチームに所属。ワールドカップにも出場を果たす。2000年から技術選に参戦。毎年着実に順位を上げ、05年にトップ10入りを果たしたあと、07年に初優勝、08年には総合2連覇を達成。13年の第50回大会では総合7位を獲得している。さまざまなフィールドのスキーヤーと交流を持ちながら、子供から大人まで、枠にとらわれないスキーの魅力を伝えている。全日本ナショナルデモンストレーター4期、ばんけいスキー学校所属

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エスケーワン

シーズンも早いもので、あっという間に春スキーシーズンになり、プロ野球もとっくに開幕し、気がつけば赤ん坊だった息子がランドセルを背負って小学校へ行く歳になった。 僕はというと相変わらず雪を求めてあちこちへ出かけ、家族のことを思い出すたびに妻や息子の笑顔が頭に浮かび、一緒にスキーがしたいなと思いながらも、こうして雪山から雪山へと飛びまわっていることに、 幸せを感じている。

2月16日に長野県・白馬八方尾根へ向けて北海道を出発し、技術選とデモ選を終えて北海道に帰ったのが3月20日。 そのあと北海道に滞在したのは6日間だけで、その間旭岳に滑りに行ったり、極上の雪を求めて北海道内を動きまわり、わが家で寝たのはたったの3日だけ……。

それからふたたび本州へ渡り、野沢温泉や苗場、そして志賀高原・熊の湯へ滑りに行き、しまいには、DVD『BUILD』シリーズでおなじみのDAIGOこと伊藤大悟君と、 冒険スキーヤーの児玉毅さんと一緒にアラスカまで行ってきた。

最近レッスンなどで「家族でスキーをしていますか?」、「井山さんと一緒に滑れる息子さんや奥さんがうらやましいですね〜」と言われるのだが、実は悲しいことに、今シーズン、家族でスキーに行けたのはほんの数回だけだ。ときと場合にもよるが、こんなペースで僕自身が雪を求めて動きまわっているので、家族からのクレームもないわけでもない。 その代わりと言っては語弊があるかもしれないが、家族で雪山に出かけたときには最高に楽しんでいる。朝から日が暮れるまで、日が暮れてからも思いっきり堪能している。

今から4年前、息子と初めてスキーで遊んだのは、息子がまだ2歳のときだった。 近所の空き地で「まずは歩く練習から」と意気込んでみたものの、ほとんど歩行の練習はせずに小さな雪だるまを作ったり、降り積もった雪にダイブしたり、雪まみれになってふたりで遊んでいたような気がする。雪という最高の遊び道具があることに気づいてしまった息子は、本当に楽しそうだったし僕自身も楽しかった。

雪やスキーの楽しさを親である自分自身も楽しんでこそ、初めて子供にも伝わるものなんだなぁと思った。自分が雪やスキーの楽しさを知るだけではなく、子供と一緒に雪とスキーで遊ぶことの楽しさを感じることが大切で、子供と一緒じゃなきゃ楽しめないことを発見し続けることも、親にとって大事なことだと感じている。

先日行ってきたアラスカでのことだ。休日ということもあって日曜日の雪山にはたくさんのファミリーが遊びに来ていた。スキー場ではない雪山にたくさんのファミリーが来ていることに僕は驚いた。 決まったコースがあるわけでもなく、自然とたくさんのファミリーがそれぞれ遊ぶ場所に集まり、みんなでソリやチューブ滑りで遊んでいた。うまくいくと歓声も挙がったりして盛り上がっていた。 ほかにもクロスカントリースキーやバックカントリースキー、スノーボード、スノーモービルで遊んだり、バーベキューをしたり、ファミリーや友人など仲間で楽しみながらにぎわっていた。 そんな光景を見て、雪山をフルに、そしてシンプルに活用している文化がここにはあるんだなと思った。ここに来ている人たちの雪山での遊び方のうまさにやられてしまった。

日本にもすばらしい雪山がたくさんある。

アラスカまでとはいかないが充分に遊べる場所がたくさんある。ただ残念なことに、今の日本には雪山での遊び方の方法やアイディアが少し足りないのかもしれない。 とくに僕が住む北海道で雪国の暮らしのなかに、こういった雪文化ができたらとつい思ってしまう。アイディアや方法はたくさんあるけれど、たくさんの人たちに伝わっていないのかもしれない。

何でも効率よくそろってしまうこの時代。部屋の中は温かく、寒いから外では遊ばない。外での遊びさえも室内で疑似体験ができてしまうという何とも悲しくなる環境が現実である。 アラスカのアウトドア文化を目の当たりにし、たくさんの刺激をもらって、さぁ北海道にも! とワクワクする気持ちが僕のなかで踊り出すのだが、家族と一緒に雪山で過ごす時間が少なすぎる自分自身に、少し説得力が足りないことに気がつき恥ずかしくなる。しかしラッキーなことに、今シーズンはまだ雪がたくさん残っている。雪と山があれば思いっきり楽しむことができる。

よーし、こうなったら、息子が大人になってもけっして忘れないぐらい記憶に残る遊びをしよう。

そう思うと、また心がワクワクと踊り出してきた。





● 記事提供=月刊スキージャーナル

井山敬介「神様がくれた雪山に感謝!」vol.26 フルに、シンプルに
SKI journal 2012年6月号掲載
スキーヤーのためのスキー総合情報サイト 「スキーチャンネル」

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