井山 敬介

井山 敬介
【PROFILE】
Keisuke Iyama
1978年 北海道生まれ
幼少の頃から地元・富良野の雪に戯れて育つ。アルペンレーサーとして早くから頭角を現わし、札幌第一高校時代にはナショナルチームに所属、ワールドカップに出場するなど、数々の実績を残す。
2000年から技術選に参戦。
毎年着実に順位を上げ、2007年はみごとに初優勝、そして2008年には連覇を飾る。

全日本ナショナルデモンストレーター、ばんけいスキー学校所属

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エスケーワン

息子がスイミングスクールに通い始めた。

僕がいつもお世話になっているスポーツクラブNAS札幌のスイミングスクールだ。子供は水が大好きらしい。

東洋医学の陰陽で表わすと、子供が陽性で大人が陰性となり、水が陰性でお湯が陽性となるらしいのだ。陽性と陰性は磁石でいうプラスとマイナスみたいなものなので、とても相性が良くくっつきやすい。 だから子供は水が好きでお風呂はあまり好きじゃないとなる。それで大人になるとだんだんと陰性になってくるので、お風呂や温泉が好きになるのだという。 ちなみに海は塩が入ることで中庸となるので子供も大人も入りやすいそうだ。そう言われてみたらそうかもしれない。 息子から「早く一緒にお風呂に入ろうよ」と誘われたことは一度もないし、公園での水遊びは全力で遊んでいる息子がいるのだ。

それだったら通ってみますか? スイミングスクール。
以前、NAS札幌のインストラクターの方に「息子さん、そろそろスイミングスクールに通わせてみてはどうですか?」と声をかけてもらっていて、妻に相談してみるとふたつ返事でOK、あとは本人次第。

「煌琉(こうりゅう=息子)、来週からスイミングスクール行ってみるか?どうする?」息子「行く! スイミング行きたい!」と即答だった。

(やはり子供は水が好きなのかもしれない)と思ったと同時に積極的なわが息子に感心した。 やると決まればわが家は早い。あまり悩まず、考えず、迷わず今までやって来ているような気がする。後悔することもあるが、やってみなきゃわからない。

さて、初スイミング当日。
受付中の息子は「早くプール入りたい」と落ち着きがない。ノリノリです。受付が終わり、スイミングキャップとパンツを手にするとにんまり笑顔。 しかし、始まりの時間が近くなり、自分より大きいお兄ちゃんやお姉ちゃんが集まり出すと不安げな様子。 ご挨拶が始まる頃には緊張で顔色も悪くなってきて、ご挨拶が終わり着替える頃には「お母さん、きょうスイミングしない……」慌てる僕。 けれども母は強い。「大丈夫、お母さんがちゃんと見ているからね」と早急に着替えをさせて強引に先生に渡す。

僕と妻は上から見学。引き続き不安な表情の息子がプールサイドに。
『大丈夫かよ……』と心配になる僕。息子は先生を頼りに見よう見まねで必死に体操をしている。 そんな息子の姿に僕もかなり不安になっている。体操終了後、一列に並び前の人の肩に手をかけシャワーへ。息子は一番小さいから先頭。 ここで顔にシャワーがかかりついに泣き出す。

『うわ〜、大丈夫かよ』とますます不安になる僕。みんなはプールへ入るが息子だけは先生に抱っこされている。
ここからしばらく先生を独占。結局先生、息子を抱っこしたままプールへ。しかし号泣する息子。僕たちのほうを見て指差して泣いている。
この状態で10分程度が経過。こっちもつらいわ……。

『がんばれ! 煌琉』

無事に終わりますようにと僕は神様にお願いする。その願いが通じたのか先生がアンパンマンの小さなボールを持ってくると反応し、なんと息子が泣き止んだ。
『よし!いいぞ』と僕は心の中でガッツポーズ。 しばらくそのボールで遊ぶと先生の手を離れ、初級クラスに合流。『さすがプロの先生は違うな!』と、僕も土俵は違うが同じインストラクターとして刺激をもらいつつ安心する。 ただ、トレーニングメニューを先生に促されると何度か首を横に振る場面がある。そのあたりは相変わらず頑固だ。ちょっと強引にだけど先生も挑戦させている。

『がんばれ息子! がんばれ先生!』

挑戦し成功すると笑顔が見られるようになってきた。そして慣れてきたのか、先生に水をかけたりしている。水への恐怖心はなくなったように見え、楽しそうにスイミングをやっている。 そして、なんと後半はみんなと一緒に同じメニューをこなした。

45分間だったが、ものすごく長く感じた。
終了後、息子は「たのしかった!」と元気よく宣言。継続決定。 僕も妻もホッとし、先生に感謝の気持ちでいっぱいになった。わが子のがんばっている姿に勇気をもらい、相変わらず親ばかの自分に気がつく。 帰りの車の中、ほっとしたのか息子は爆睡。その寝顔がちょっとだけたくましく見えた。

甘やかさず厳しく育てようと思っていても、やはり僕も子の親である。誰かの手に渡すのは怖い。
手を差し伸べたいけれど差し伸べられない、「見守る」という緊張感。
息子と同時に親である自分も試されている気がした。 プールから脱衣所に笑顔で戻ってきた息子を見たときの充実感は、親として大切なことを知らせてくれた瞬間だった。




● 記事提供=月刊スキージャーナル

井山敬介「神様がくれた雪山に感謝!」vol.12 子供の勇気、親の勇気
SKI journal 2009年11月号掲載
スキーヤーのためのスキー総合情報サイト 「スキーチャンネル」

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