井山 敬介

井山 敬介
【PROFILE】
Keisuke Iyama
1978年 北海道生まれ
幼少の頃から地元・富良野の雪に戯れて育つ。アルペンレーサーとして早くから頭角を現わし、札幌第一高校時代にはナショナルチームに所属、ワールドカップに出場するなど、数々の実績を残す。
2000年から技術選に参戦。
毎年着実に順位を上げ、2007年はみごとに初優勝、そして2008年には連覇を飾る。

全日本ナショナルデモンストレーター、ばんけいスキー学校所属

井山敬介 公式 WEB
井山敬介 公式 BLOG

エスケーワン

「メリットの有り、無し、で物事を決めるなよ。メリットとは自分で作るものだ」。

先日、90歳になる指導員の大先輩にもらった言葉だ。その方は90歳にして現役スキーヤー。力強い言葉に33歳の僕は衝撃を受けた。 半分も生きていないどころか、約3分の1しか人生を経験していない僕にとって、言葉ひとつひとつのすべてに説得力を感じた。

6年前ぐらいだと思う。初めて出会ったのはたしか札幌で行なわれていたスキーの展示会のときだった。初めましての挨拶のあとすぐにエベレストの話を聞いている僕がいた。 雑誌や映像を通して滑りやインタビューから伝わってくる人柄はある程度想像していた。いつか会ってみたい、絶対に一緒に滑ってみたいと強く思っていた。

出会って話してみると想像以上にすばらしい人柄に感動したことを今でもはっきりと憶えている。感動というより、言葉ではうまく言えないけれど“ワクワク”とか“ドキドキ”という感覚だった。 いや“ドキドキ”はまずいような気がするので“ワクワク”にしておこう(笑)。

児玉毅さんと出会ったときのことだ。
その後、タケさん(児玉)とはたくさんの活動を一緒にさせてもらっている。 現在ともに行なっているプロジェクトだけでも「北海道スノースポーツミーティング」、「SK1(エスケーワン)」、登山家の栗城史多君が率いる「A-SHIFTJAPAN(エーシフトジャパン)」、「北海道雪プロジェクト」と4つにまでなっている。タケさんの可能性は上を見ればきりがないけれど、下を見ても底がない。

このコラムにも何度も登場しているプロジェクト「北海道スノースポーツミーティング」。 僕らが一番最初に立ち上げたもので、メンバーは事務局の松澤憲司さん、実行委員長の森脇俊文さん、プロスキーヤーの児玉毅さん、大学の同級生でありPeakPerformance(ピークパフォーマンス)の輸入代理店でブランドマネージャーとして活躍する三上大紀君、DVD『BUILD(ビルド)』の製作、HIPHOPアーティストとして、地元・北海道のラジオ番組のパーソナリティーとしてマルチに何でもこなすDAIGO(伊藤大悟)。そして僕。ほかにもたくさんの方に支えられている。

このプロジェクトは
 『雪国の暮らしをもっと豊かなものにしていくためには?』
 『スキーの楽しさをもっとたくさんの人たちに知ってもらうためには?』
 『激減したスキー学習を復活させるためには?』
 『雪育』など、
さまざまなテーマについてありとあらゆる角度から試行錯誤しながら全力で活動している。

4年前に始まり、ゼロから話し合い、行動し、形にしてきた。幾度となく重ねた話し合いでは答の見えない現実に、自分たちが動く意味さえわからなくなるほどだった。だけど、話し合いが行き詰まったり、いざとなると考える前に行動できるのもこのメンバーの良いところだと思う。

やりたければやろう、やりたくなければやめよう、やるなら全力でやろう、やってみないとわからない! と冒険心丸出しで今まで進んできたように思う。とにかくガムシャラに挑戦してきた。

ビジネス書に書いてあるような言葉を並べられてもなぜかピンとこない。僕たちはいつも本質を知りたくなる。本気でやりたいのか?やりたくないのか? メンバーが「やる!」と言ったら、本気でやるのが暗黙のルールみたいになっているから簡単に「やろうか」なんて言えない。だけど本当にやりたいことを議題に上げるとワクワクするし、こうした作戦会議は時間が経つのを忘れて何時間でもできる。

僕たちはスキー学習の復活と、子供たちにスキーのすばらしさを知ってもらいたいという熱い気持ちだけで、3シーズン前から「スーパースキー学習」というものをやってきた。それもあってか、昨年まで札幌市内の中学校ではスキー学習の実施率が30%まで激減していたものが、今年は60%にまで回復した。札幌市教育委員会も『雪育』に力を入れてきた。僕たちにとって子供たちや先生方の笑顔が何よりの報酬だった。

自分たちのやりたいことだけをやってきた僕たちだけれど、そうした活動も自分たちの基盤がしっかりとあって初めてできるもの。考えるべきことは考えながらやっていかなければいけないと思う。

何がメリットで何がデメリットかではなく、どうやったらメリットを作り出せるのか。

90歳の指導者の言葉が強く響いた。




● 記事提供=月刊スキージャーナル

井山敬介「神様がくれた雪山に感謝!」vol.22 ザ・メリットメイク
SKI journal 2011年9月号掲載
スキーヤーのためのスキー総合情報サイト 「スキーチャンネル」

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