井山 敬介

井山 敬介
【PROFILE】
Keisuke Iyama
1978年生まれ、北海道出身。

2014年・第51回全日本スキー技術選手権大会 優勝!

幼少の頃から地元・富良野の雪に戯れて育つ。アルペンレーサーとして実績を残し、高校時代にはナショナルチームに所属。ワールドカップにも出場を果たす。2000年から技術選に参戦。毎年着実に順位を上げ、05年にトップ10入りを果たしたあと、07年に初優勝、08年には総合2連覇を達成。13年の第50回大会では総合7位を獲得している。さまざまなフィールドのスキーヤーと交流を持ちながら、子供から大人まで、枠にとらわれないスキーの魅力を伝えている。全日本ナショナルデモンストレーター4期、ばんけいスキー学校所属

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エスケーワン

子供の頃は地元・富良野の友人たちと一緒に毎日滑っていた。誰が言っていたかは忘れたが、たしか有名なスポーツ選手がテレビで言っていた「1日休むと3日遅れる」という言葉を『俺たちの合い言葉!』と勝手に決め込んで、毎回のようにその言葉を口にしながらとにかく毎日、毎日、寒くても吹雪いていても雪山へ行っていた。「1日休むと3日遅れる」とは言うものの、僕たちはだいたい休む気なんてさらさらなく、とにかく毎日のスキーが楽しすぎた。

気がつけば34歳。34歳になった現在はどうだろうか? 相変わらず寒くても吹雪いていても晴れていても、毎日雪山へ行っている。今年の北海道は雪が多く、おかげさまで僕たちスキーヤーにとっては恵まれたシーズンになっている。スキー場でもバックカントリーでも本当に気持ち良く滑らせてもらっている。

ここ最近は日の出前にスキー板にシールを付け、ヘッドライトを装着し山道を登ったりもしている。本当に天気の良い日には、月明かりときれいな満点の星空に包まれながら山道を登る、なんていうぜいたくなご褒美を雪山の神様から与えてもらえる。たまらない。そんな日は、朝日が山の間から顔を出し、ノートラックの斜面をピンクというかオレンジというか何とも言えない朝日色に染める。太陽の動きとともにその色は刻々と変化し、降り積もった雪の表面がキラキラと、世界中にあるどんな高価なダイヤモンドよりもきれいに輝く。本当にプライスレスである。

絶景の斜面を眺めながら一歩一歩脚を前に出す。白い息と一緒に「ふぅ、気持ち良い」と自然にそんな言葉が出てしまう。一緒に登っていたビックマウンテンスキーヤーの児玉毅さんに、「敬介、登りが気持ち良くなってしまったということは、もう完全にこっちの世界に来ちゃったね! ははは」と言われた。「そうですね、ヤバいですね! ははは」と笑顔で答える。心の底から気持ち良い。山頂に到着すると太陽も上がり、その日は撮影ということもあって陽の当たっている斜面から攻めていくことにした。相変わらず斜面はキラキラと輝いている。しっかりと空は青く、いや青というより“宇宙色”とでも言うべき色をしている。

登りながら斜面をチェックし、しっかりと滑るラインを決めておく。万が一、滑るラインをまちがえるとケガや事故にもつながるのでライン選びは慎重に行なう。上から眺める斜面の見え方と下から眺める斜面の見え方では違うことが多い。僕の経験上ではほとんど違う。近くで見るのと遠くで見るのでも違う。しっかりと木や岩、斜面変化などの目印を決め、カメラマンやライダー同士で、何度も、何度もラインどりを確認する。気持ち良く、楽しく、滑るためにとても大切な作業のひとつだ。慎重にラインどりを確認し滑る準備をする。 「技術選」という舞台に立ち、勝負する緊張感のなかでスキーをすることも楽しいが、整備の行き届いたゲレンデや大会バーンではない、自然のままの、雪山の斜面を登って滑る緊張感もまた楽しい。シーズンをとおしてこんなに楽しいスキーを味わっている僕は本当に幸せ者で、最高で最強のスキー仲間と、滑りを支えてくれる道具、そして雪山に感謝の気持ちでいっぱいだ。スキーの楽しみ方は無限にある。初めてスキーをしたのが3歳。それが34歳になった今でも、毎年、毎年、人生最高の1本を更新している。

スキー板を履いて、ヘルメットのアゴ紐を「パチン」と付けゴーグルをかける。『よし! 視界良好!』。ストックをしっかりと握り、これから滑るラインをイメージしながら仲間からのスタートコールを待つ。

「それでは敬介行くよ! 3・2・1……スタート!!」。

キラキラした斜面にドロップイン。同時に味わう何とも言えない浮遊感。スキー板が粉雪のなかをなでるように滑っていく。サラサラサラ……と音が聞こえてくる。『おっ! 雪、なまらいいね!』と僕の心のなかにある本物の『いいね!』が点灯する。大きな大きな斜面には、今、僕しか滑っていない。独り占めの興奮が沸き立つ。1ターンめの場所は何度も確認して決めていた場所。いよいよターンに入る。全身を粉雪が優しく包み込み、目の前が一瞬まっ白で見えなくなる。そして、次のターンに入るときに、視界がパッ! と広がった。まだまだ続くキラキラした斜面が僕を受け入れてくれた瞬間だった。最高だ。心のなかで語りかける。

『雪山の神様、ありがとうございます。こんな時間がいつまでも続きますように……』。

すると、粉雪がまた僕を優しく包み込んでくれた。






● 記事提供=月刊スキージャーナル

井山敬介「神様がくれた雪山に感謝!」vol.31 ご褒美
SKI journal 2013年4月号掲載
スキーヤーのためのスキー総合情報サイト 「スキーチャンネル」

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